スマホ首が重症化した場合に現れる、最も深刻で、かつ見過ごされがちな影響、それが「自律神経の乱れ」です。首の歪みという、物理的な問題が、私たちの心と体の機能を、無意識のうちにコントロールしている、生命維持の根幹システムそのものを、狂わせてしまうのです。自律神経は、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」が、シーソーのようにバランスを取りながら、呼吸、心拍、血圧、体温、消化、睡眠といった、生命活動を自動的に調節しています。そして、この自律神経のコントロールセンターである「脳幹」や、重要な神経の通り道は、首の骨、特に、頭蓋骨と接する「上部頸椎」のすぐ近くに、非常にデリケートな形で位置しています。スマホ首(ストレートネック)が重症化し、頭が大きく前に突き出す姿勢が固定化されると、この生命維持の中枢が、常に物理的な圧迫や、血流の悪化といった、強いストレスに晒され続けることになります。この物理的なストレスが、自律神経のシーソーを、「交感神経」が過剰に優位な状態、つまり、体が、常に興奮・緊張状態(闘争・逃走モード)から、抜け出せない状態へと、傾けてしまうのです。その結果として現れる症状は、実に多岐にわたります。「原因不明の全身倦怠感」や、どれだけ寝ても疲れが取れない「慢性疲労」。寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める「睡眠障害」。心臓が常にドキドキする「動悸」や、急な「息切れ」。そして、「吐き気や胃の不快感、便秘や下痢」といった、消化器系の機能不全。さらに、深刻なのが、精神面への影響です。理由もなくイライラしたり、不安に襲われたり、気分がひどく落ち込んだり、物事への興味や関心が失われたりといった、「うつ病」と酷似した症状が現れることも、決して珍しくありません。これらの症状は、内科や心療内科を受診しても、検査では異常が見つからず、「自律神経失調症」と診断され、根本原因である首の問題が見過ごされてしまうことも多いのです。スマホ首は、あなたの心と体の両方を、静かに、しかし確実に、蝕んでいく危険性を秘めています。