ウイルスや細菌の感染といった、明確な原因が見当たらないにもかかわらず、腰痛、腹痛、下痢といった症状を、慢性的に、あるいはストレスがかかった時に繰り返す場合、その背景には「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome, IBS)」という、心と体が深く関わる病気が隠れている可能性があります。過敏性腸症候群は、腸そのものには炎症や潰瘍といった、目に見える異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感、そして便通の異常(下痢や便秘)が、長期間にわたって続く、機能的な疾患です。その発症には、「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼ばれる、脳と腸の密接な相互関係が、深く関わっていると考えられています。強いストレスや不安を感じると、脳から放出されるストレスホルモンが、自律神経を介して腸に伝わり、腸の運動を異常に活発にさせたり、逆に動きを鈍くさせたりします。また、腸が、通常では感じないような、ごくわずかな刺激(食事やガスの移動など)に対しても、痛みとして感じてしまう「知覚過敏」の状態に陥ります。この過敏な腸が、激しくけいれんすることで、下腹部痛や、それに伴う腰痛が引き起こされ、同時に、腸の内容物が水分を十分に吸収されないまま、急速に通過してしまうため、下痢(特に、突然、強い便意に襲われる「切迫性便意」)が起こるのです。これを「下痢型IBS」と呼びます。通勤電車の中や、大事な会議の前など、特定のストレス状況下で症状が現れやすいのが特徴で、排便によって腹痛が一時的に和らぐことも、診断の手がかりとなります。感染性胃腸炎と異なり、発熱や血便を伴うことは、ほとんどありません。もし、ストレスと連動して、これらの症状を繰り返しているようであれば、消化器内科や心療内科に相談し、適切な診断と治療を受けることが、つらい症状から解放されるための第一歩となります。
ストレスが引き金?「過敏性腸症候群(IBS)」の可能性