腰が痛い時、私たちは、つい、痛む場所の筋肉、つまり背中の筋肉(アウターマッスル)が悪いのだと考えがちです。しかし、近年のリハビリテーションの世界では、腰痛の本当の根本原因は、痛む「頑張りすぎ筋」にあるのではなく、その仕事をサボっている「怠け筋」、すなわち体の深層部にある「インナーマッスル」の機能不全にある、という考え方が主流になっています。インナーマッスル、特に体幹の深層部を構成する「コアユニット」は、私たちの腰を安定させる上で、最も重要な役割を果たしています。このコアユニットは、お腹をコルセットのように包む「腹横筋」、背骨の一つひとつを安定させる「多裂筋」、骨盤の底で内臓を支える「骨盤底筋群」、そして呼吸を司る「横隔膜」の四つの筋肉から成り立っています。これらのインナーマッスルが、呼吸と連動して協調して働くことで、お腹の内部の圧力(腹腔内圧)が高まり、背骨が、内側から、まるで空気で膨らんだ支柱のように、強力に支持されます。これが、いわゆる「天然のコルセット」です。しかし、運動不足や、長時間の座りっぱなしの生活が続くと、このインナーマッスルは、使い方を忘れて、どんどん弱ってしまいます。すると、この天然のコルセット機能が失われ、背骨はグラグラと不安定な状態になります。体は、この不安定な背骨を、何とか支えようとして、本来は体を動かすための筋肉である、背中側の大きなアウターマッスル(脊柱起立筋など)を、常に緊張させて、背骨を外側からガチガチに固めようとします。これが、慢性的な腰の筋肉の張りや、痛みの正体です。つまり、あなたが感じている腰の痛みは、インナーマッスルがサボっている分の仕事を、アウターマッスルが、悲鳴を上げながら、肩代わりしている結果なのです。したがって、腰痛を根本から改善するためには、痛む場所をマッサージするだけでなく、この眠ってしまったインナーマッスルを、再び目覚めさせるトレーニングが、不可欠となるのです。