ブロック注射は、医師の厳格な管理のもとで行われる、比較的安全性の高い治療法です。しかし、体に針を刺し、薬剤を注入する医療行為である以上、そのリスクや副作用が、全くゼロというわけではありません。治療を受ける前に、どのような可能性があるのかを、正しく理解しておくことは、患者の権利であり、義務でもあります。まず、最も頻度が高い副作用は、注射そのものに関連するものです。注射部位の「痛み」や「内出血」、針が神経に触れたことによる、一時的な「しびれ感」などが起こることがあります。これらは、通常、数日以内に自然に軽快します。次に、注入する薬剤による副作用です。局所麻酔薬の影響で、一時的に、血圧が低下したり、足に力が入らなくなったりすることがあります。そのため、注射後の安静時間が、非常に重要になります。また、ステロイド薬を用いた場合には、血糖値が一時的に上昇したり、顔がほてったり、ごく稀に、女性では不正出血が起こったりすることもあります。そして、頻度は極めて低いですが、最も警戒すべき、重篤な合併症が「感染」と「神経損傷」、「出血」です。注射の際に、皮膚の細菌が、針と共に体内に侵入し、硬膜外腔や、椎間板に感染(化膿性脊椎炎など)を起こすと、激しい痛みや発熱を伴い、長期の入院や手術が必要となることがあります。これを防ぐため、医療機関では、手術室レベルの、厳重な滅菌操作が行われます。また、針が、意図せず、重要な神経そのものを傷つけてしまった場合、永続的な麻痺や、しびれが残る可能性も、ゼロではありません。さらに、硬膜を誤って穿刺してしまうと、脳脊髄液が漏れ出し、激しい頭痛(硬膜穿刺後頭痛)が起こることもあります。これらの重篤な合併症の発生頻度は、熟練した医師が行う場合、数千回から数万回に1回程度と、極めて稀です。しかし、その「ゼロではないリスク」を、十分に理解し、納得した上で、治療の同意書にサインをすることが、何よりも大切なのです。