ツボ押しは、多くの膝痛に対して、素晴らしい緩和効果をもたらしてくれる、優れたセルフケアです。しかし、その一方で、「ツボ押しは、万能の治療法ではない」という、その限界と、危険性も、冷静に認識しておく必要があります。「自分で治す」という言葉は、非常に魅力的ですが、それは、専門家による「正確な診断」という、土台の上にあって、初めて安全に成り立つものなのです。特に、以下に挙げるような症状が見られる場合は、自己判断でツボ押しを続けるのではなく、速やかに整形外科を受診すべき「危険信号(レッドフラッグ)」です。まず、「明らかなケガ(外傷)の後に、急激に膝が腫れ上がった」場合。スポーツ中に膝をひねった、転倒した、といったエピソードの後に、歩けないほどの激痛と、パンパンの腫れが現れた場合は、「靭帯断裂」や「半月板損傷」、あるいは「骨折」の可能性があります。この状態で、むやみにツボを押すと、損傷を悪化させる危険性があります。次に、「膝が、ある角度から動かなくなる(ロッキング)」という症状。これは、断裂した半月板などが、関節に挟まり込んでいる可能性があり、専門的な処置が必要です。また、「膝がガクッと崩れるような、強い不安定感(膝崩れ)」がある場合。これは、膝を支える重要な靭帯が、機能していないサインです。さらに、「高熱や、悪寒、震えを伴う」場合。膝の腫れと痛みに加えて、全身の症状が見られる場合は、関節の中に細菌が侵入する「化膿性関節炎」の可能性があり、緊急の治療を要します。そして、ツボ押しを続けても、「痛みが、1〜2週間以上、全く改善しない、あるいは、むしろ悪化している」場合も、自己流のケアの限界です。その痛みの背後には、変形性膝関節症の進行や、関節リウマチのような、専門的な治療が必要な病気が隠れているかもしれません。ツボ押しは、あくまで、自分の体をいたわるための一つの手段。その声に耳を傾け、手に負えないと感じたら、勇気を持って、専門家の助けを求めること。それもまた、「自分で治す」ための、賢明で、責任ある判断なのです。