腰痛の原因は、筋肉の「弱さ」だけでなく、特定の筋肉の「硬さ(柔軟性の欠如)」によっても引き起こされます。特に、腰(骨盤)を、まるで綱引きのように、前後から引っ張り、不適切な傾きを生じさせてしまう、二つの筋肉の硬さは、多くの腰痛患者に共通して見られる問題です。それが、体の前側にある「腸腰筋」と、後ろ側にある「ハムストリングス」です。まず、「腸腰筋(ちょうようきん)」は、背骨(腰椎)と骨盤の内側から始まり、股関節の内側(太ももの付け根)へと繋がる、体の深層にあるインナーマッスルです。この筋肉は、股関節を曲げる(膝を胸に引き寄せる)際に働くため、長時間のデスクワークなどで、座った姿勢が続くと、常に縮こまった状態になり、そのまま硬く、短くなってしまいます。短く硬くなった腸腰筋は、立ち上がった姿勢でも、その緊張が抜けず、骨盤を前方、そして下方へと、常に強く引っ張り続けます。その結果、骨盤は前に傾き(骨盤前傾)、バランスを取るために、腰の骨(腰椎)は、弓なりに、過度に反り返ってしまいます。これが、多くの女性を悩ませる「反り腰」の正体です。反り腰の姿勢では、腰椎の後ろ側にある椎間関節に、常に圧迫ストレスがかかり続け、腰痛の大きな原因となります。一方、「ハムストリングス」は、お尻の付け根(坐骨)から始まり、膝の裏側へと繋がる、太ももの裏側の大きな筋肉群です。この筋肉が硬いと、お辞儀をするような、前かがみの動作の際に、股関節から体を曲げることができず、骨盤がスムーズに前に傾くのを妨げてしまいます。その結果、骨盤の動きを代償するために、腰の骨(腰椎)だけを、無理に丸めようとするため、腰の筋肉や、背骨のクッションである椎間板に、極度の負担がかかるのです。この、腰を前後から引っ張る二つの筋肉の柔軟性を取り戻すためのストレッチは、座り仕事の多い現代人の腰痛予防・改善に、不可欠なセルフケアと言えるでしょう。
腰を前後から引っ張る綱引き、腸腰筋とハムストリングスの硬さ