腰痛、腹痛、下痢という症状は、ありふれたものであることが多いですが、ごく稀に、その裏に、一刻を争う、命に関わる重篤な病気が隠れていることがあります。これらの「危険なサイン(レッドフラッグ)」を見逃さないことが、何よりも重要です。以下に挙げるような症状が一つでも見られる場合は、様子を見たり、自己判断で市販薬を飲んだりせず、直ちに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。まず第一に、「痛みの強さが尋常ではない」場合です。「バットで殴られたような」「引き裂かれるような」と表現されるほどの、これまで経験したことのない、突然発症の激痛は、極めて危険なサインです。特に、腹部から背中、腰にかけて移動するような激痛は、「腹部大動脈瘤破裂」や「大動脈解離」といった、大血管の病気の可能性があります。第二に、「冷や汗、意識が遠のく、顔面蒼白」といった、ショック症状を伴う場合です。これは、腹腔内での大量出血や、重度の感染症(敗血症)、急性膵炎などを示唆している可能性があります。第三に、「高熱、悪寒、震え」を伴う場合です。単なる胃腸炎でも発熱はありますが、38.5度以上の高熱が続き、ガタガタと体が震えるような場合は、腎盂腎炎や胆嚢炎、あるいは消化管穿孔による腹膜炎といった、重篤な感染症が疑われます。第四に、「血便やタール便(黒色便)、吐血」を伴う場合です。消化管のどこかで、活動性の出血が起きている証拠であり、緊急の内視鏡検査などが必要となります。第五に、「体を動かせないほどの痛みで、楽な姿勢がない」場合です。体を丸めると少し楽になる、といったことがなく、どう動いても激痛が続くのは、腹膜炎などの重篤な状態を示唆します。これらのサインは、体が発する、最大のSOSです。決して軽視せず、ためらわずに、救急医療の助けを求めてください。