腰痛、腹痛、下痢が同時に起こる原因として、最も頻度が高く、誰もが一度は経験したことがあるのが「感染性胃腸炎」、いわゆる「お腹の風邪」や「食あたり」です。これは、ノロウイルスやロタウイルスといったウイルス、あるいは、サルモネラ菌やカンピロバクターといった細菌が、飲食物などを介して口から侵入し、主に小腸や大腸の粘膜で増殖・感染することによって引き起こされます。感染によって腸の粘膜に炎症が起こると、体は、これらの病原体を一刻も早く体外へ排出しようと、腸管内へ大量の水分を分泌し始めます。これが、水のような便、すなわち「下痢」の正体です。同時に、病原体を排出しようとする腸の「蠕動(ぜんどう)運動」が、異常に活発になります。この腸の激しいけいれんが、下腹部を中心とした、差し込むような、あるいは、波のように押し寄せる「腹痛」を引き起こすのです。では、なぜ腰痛まで起こるのでしょうか。これには二つの理由が考えられます。一つは、激しい腹痛や腸のけいれんという強い刺激が、神経を通じて、背中側の腰にも「関連痛」として感じられるためです。特に、下腹部の痛みは、腰の下の方の痛みとして認識されやすくなります。もう一つの理由は、下痢や嘔吐を繰り返すことで、体が脱水状態になり、電解質のバランスが崩れると、全身の筋肉、もちろん腰の筋肉も、痙攣(けいれん)したり、こわばったりして、痛みを生じやすくなるからです。感染性胃腸炎の場合、これらの症状に加えて、吐き気や嘔吐、発熱、全身の倦怠感などを伴うことが一般的です。ほとんどは、数日間、安静と水分補給を心がけることで自然に回復しますが、脱水症状がひどい場合や、症状が長引く場合は、医療機関を受診する必要があります。