魔女の一撃とも呼ばれ、突然、息もできないほどの激痛に襲われる「ぎっくり腰(急性腰痛症)」。この恐ろしい痛みの正体も、その多くは「筋肉」や、筋肉を包む「筋膜」の、急性的な損傷が原因です。ぎっくり腰は、骨がずれたり、神経が挟まったりするのではなく、腰の筋肉や筋膜が、許容量を超える急激な負荷に耐えきれず、まるで足首の捻挫や、ふくらはぎの肉離れのように、微細な断裂や損傷を起こし、強い「炎症」が生じている状態なのです。重い物を持ち上げようとした瞬間や、くしゃみをした拍子、あるいは、ただ顔を洗おうと、少し前かがみになっただけ、といった、何気ない動作が引き金となります。しかし、その背景には、すでに、日頃からの疲労の蓄積や、筋肉のアンバランスによって、腰の筋肉が、いつ切れてもおかしくない、パンパンに張り詰めた「時限爆弾」のような状態になっていた、という事実が隠されています。ぎっくり腰になった直後は、炎症が最も強い「急性期」です。この時期には、炎症のサインである「熱感」「腫れ」「発赤」「激痛」が特徴で、体を動かすことが困難になります。この急性期に最も重要なのは、「安静」と「冷却(アイシング)」です。無理に動いたり、温めたり、あるいは、強くマッサージしたりすると、炎症をさらに助長し、回復を著しく遅らせてしまいます。痛みが最も楽な姿勢(横向きで膝を曲げるなど)で休み、氷嚢などで患部を15〜20分冷やす、という処置を繰り返します。通常、この激しい痛みは、2〜3日でピークを越え、徐々に和らいでいきます。しかし、痛みが和らいだ後も、損傷した筋肉や筋膜が、完全に修復されるまでには、数週間かかります。この回復期に、適切なストレッチや、軽い運動を再開し、二度とぎっくり腰を繰り返さないための、根本的な筋肉のバランス改善に取り組むことが、何よりも重要となるのです。