日本の住環境では、椅子だけでなく、床に直接座ったり、座椅子を使ったりする「床座(ゆかざ)」の生活を送っている方も少なくありません。しかし、この床座の姿勢は、椅子に座る以上に、腰に大きな負担をかけやすく、腰痛の温床となりがちです。床に直接あぐらをかいたり、足を伸ばして座ったりすると、ほとんどの場合、骨盤は大きく後ろに傾き(骨盤後傾)、腰は極度に丸まってしまいます。この姿勢を長時間続けることが、腰の筋肉や椎間板に、どれほどのストレスを与えるかは、想像に難くありません。座椅子を使えば、背もたれが体を支えてくれるため、少しは楽になりますが、座面がフラットなままだと、やはり骨盤は後ろに倒れやすく、だらしない姿勢になりがちです。この床生活における腰痛を予防・改善するために、腰痛対策用の座布団が、非常に重要な役割を果たします。床座で使う座布団選びのポイントは、「適度な高さ(厚み)」と「硬さ」です。お尻の下に、ある程度の高さを作ることで、股関節の位置が膝よりも高くなり、骨盤を立てることが、格段に容易になります。ヨガや瞑想で使われる「座蒲(ざふ)」が、厚みのある丸い形をしているのは、まさにこの原理に基づいています。理想的なのは、お尻の後ろ半分に、少し硬めで、高さが5〜10cm程度のクッションを敷き、坐骨をそのクッションの前端に乗せるように座ることです。これにより、骨盤が自然と前傾し、背筋がすっと伸びるのを感じられるはずです。市販されている、骨盤を立てることを目的とした、立体的な形状のフロアクッションや、座椅子専用の腰痛対策クッションも、非常に有効です。一般的な、柔らかくて薄い、正方形の「座布団」は、お尻の痛みを和らげる効果はあっても、姿勢を矯正する力はほとんどありません。床生活で腰を守るためには、「骨盤を立てる」という目的を明確に意識した、専用の座布団やクッションを選ぶことが、何よりも大切なのです。